現代に引き継がれる大阪万博の警備とは
福岡県の警備会社、株式会社アーカイヴセキュリティがお届けするブログ・第3回は、大阪万博と警備の歴史についてお伝えします。
2025年・大阪で55年ぶりとなる国際博覧会(大阪万博)が開催されます。
現代では大規模イベントで多くの警備員が来場者の安全を守る姿は当たり前になりました。
実はこの光景は、1970年にアジアではじめて開催された最大の世界的イベント・大阪万博での警備の活躍が生み出したものなのです。
想像もできない大規模イベント
大阪万博は、これまでの日本では経験したことのない大規模なイベントでした。
予想される来場者数は3000万人。
1964年に行われた東京オリンピックでも1978万人。
オリンピックの場合は、種目別に離れた異なる会場に観客は収容され、競技中は座って応援します。
一方、大阪万博はたった一つの会場のため、中で来場者はとどまることなく歩きまわります。
コントロールするのに必要な1200人を全日程183日間、警察だけではとても集めきれませんでした。
そこで結成されたのが、警官と民間警備会社の警備員たちで構成された「日本万博博覧会警備隊」です。
警備の現場が生み出したバッファロー作戦
100万坪の広大な土地に作られた万博会場には、37の海外パビリオンと28の国内パビリオン、アミューズメント施設のエキスポランド。
お祭り広場では大規模イベントが行われ、シンボルである太陽の塔が万博会場を見下ろしていました。
予想外の事態発生
万博が始まってすぐに想定外の事態が起こりました。
開門と同時にお目当てのパビリオンに向かって入場者が走りだしたのです。
アメリカ館など入場が困難といわれる人気パビリオンになんとしてでも入りたいと考えた人たちでした。
小さな子どもや老人もいる中で大変危険な状況です。
警備員が「走らないでください!」とハンドマイクで叫び続けるも誰も聞く人はいません。
横一列に警備員が並び誘導するという方法を試すも、間をすり抜けて走って行ってしまいます。
その様子はまるで草原を走るバッファローの群のようでした。
安全とサービスの両立
なんとか事故が起こらないようにと考えたのが、走る人たちの導線上に警備員が立ち「人間の壁」となって走る人々を止める作戦です。
しかしその光景は、万博を楽しみにやってきた人たちに威圧感を与えてしまうものでした。
警備というものは安全だけでなく、その場に調和した空気でなければならないはず。
そうして悩んだ末に生み出されたのが、開門時に警備員たちがパンフレットを配るという「バッファロー作戦」です。
入場者が走らないように配置された場所で一人ひとりに声をかけながらパンフレットを配りました。
入場者は立ち止まりパンフレットを受け取ってから歩きだします。
わくわくとした表情でパンフレットを眺めながら歩く人も多くいました。
このアイデアにより入場者の高まる気持ちに寄り添いながらも、安全を確保できたのです。
多くの人を安全に移動する「分断作戦」
閉幕まで8日と迫った9月5日、この日は開門前から大変な数の入場者が列を作っていました。
このままでは危険だと判断した警備が入場制限を提案するも、当時はそんな発想が無かった時代ゆえに答えはNO。
なんと会場に収容能力の42万人をはるかに超えた83万人が入場します。
これは当時の島根県民の人口を超える人数でした。
会場内の混乱はもちろん、夜になれば帰宅する人の波で駅が溢れかえりました。
終電の時間が近づくにつれ、電車に乗れないのではと焦り苛立つ人々が我先にと押し合います。
いつ将棋倒しになって大事故が起きてもおかしくない状態でした。
「このままではマズイ」
現場の緊張間がマックスとなった時、警備員の1人がパビリオンの行列を整理する時に編み出した「分断作戦」を取り入れることを思いつきます。
人気パビリオンを安全に並んでもらうため、15人ずつのグループに分けてグループごとに移動させていく方法です。
この「分断作戦」により駅のホームや階段での事故を防ぎ、無事に多くの人々が帰路についたのでした。
しかし結局、安全に誘導したとはいえ最終電車に乗れない人が約3500人でてしまいました。
彼らは会場内で野宿することとなります。
警備員たちは現場判断で毛布や食べ物、飲み物を調達して配りました。
警備員たちの配慮によって殺気立っていた人たちも落ち着き、翌朝は朝から万博を楽しみ、心に残る思い出深い1日となりました。
現代に引き継がれる大阪万博の警備
最終的に大阪万博に訪れたのは初めの予想の倍以上である6421万8770人。
数々の記録を残した大阪万博も、警備員たちの陰の活躍もあって無事に幕をおろします。
大阪万博で生まれたバッファロー作戦や分断作戦など、今ではイベント会場やテーマパークなどで見慣れた光景となりました。
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